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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)9411号 判決 1979年2月16日

原告 武居文吉

右訴訟代理人弁護士 加藤豊三

被告 小金井カントリー倶楽部

右代表者理事長 永野重雄

右訴訟代理人弁護士 松井一彦

同 大谷昌彦

同 市野沢邦夫

右訴訟復代理人弁護士 中川徹也

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告が被告の週間会員たる地位を有することを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  被告は、特別会員、正会員を構成員とするいわゆる権利能力なき社団であり、訴外小金井ゴルフ株式会社(以下「訴外会社」という。)よりゴルフ場、建物等を賃借してゴルフ場の経営を行なっている。

2  亡武居孝次郎(原告の実父、以下「亡孝次郎」という。)は、昭和一八、九年ころ、被告との間に、被告の週間会員たる地位の取得を内容とする入会契約(以下「入会契約」という。)を締結し、入会預託金三〇〇円を被告に納入して、被告の週間会員たる地位を取得した。

3  被告の週間会員たる地位の基本的内容は、次のとおりである。

(一) 預託金返還請求権を有すること

(二) ゴルフ場が存続する限りにおいて、被告の経営する建物、施設、ゴルフコースを所定のメンバー料金をもって週間(月曜日ないし土曜日)に限り利用し、ビジターを同伴して、クラブライフをエンジョイできること

(三) 所定の年会費その他の負担金を支払う義務のあること

(四) 被告の経営について発言権及び議決権を有しないこと

(五) 週間会員の基本的権利を侵害しない限り、被告の定款、細則、理事会の決議を遵守すること

4  亡孝次郎は、昭和三五年九月一九日死亡して相続が開始し、相続人間の遺産分割協議の結果、相続人たる原告が亡孝次郎の有していた被告の週間会員たる地位を承継した。

5  被告の週間会員たる地位に相続性のあることは、次の諸点から明らかである。

(一) 被告の週間会員たる地位は、いわゆる預託金型会員制のゴルフ会員権と同様の内容を有している。

(1) 被告の昭和三〇年三月一三日改正にかかる定款、細則及び昭和五〇年二月二七日付定款、細則によると、「入会金」なる文言は一切使用されていない。右両定款、細則三条には、入会申込者が入会時に被告に払い込むべき金員を「所定の預託金」又は「その負担金」と明言している。そのうえ、現行定款、細則六条の二には「預託金」の返済方法が定められている。

亡孝次郎が被告に入会時に納入した金員は、右の預託金である。

(2) 仮に、被告の週間会員の制度発足当初、週間会員たる地位が預託金型会員制のゴルフ会員権と同様の内容を有していなかったとしても、前記のとおり、被告の現行定款、細則に「入会金」ではなく「預託金」の文言が使用されているように、現在では、事情の変更が見られ、被告の週間会員たる地位は、変遷を遂げ、その実態は、預託金型会員制のゴルフ会員権と相違はない。

(二) しかるところ、預託金型会員制のゴルフ会員権が譲渡、相続の対象となりうることは現在では当然の事柄であり、このことは事実たる慣習として定着している。したがって、被告の定款、細則もしくは入会契約上、週間会員たる地位について譲渡、相続の禁止の特約のない限り、その譲渡、相続性を否定することは許されない。

(三) もっとも、被告の現行定款一二条には、会員たる資格の消滅事由として、「正会員にして会社(注・訴外会社のこと)の株主たる資格を喪失したとき」、「脱退」、「除名」と並んで「死亡」が掲げられている。

(1) しかし、「死亡」が資格の消滅事由となっているのは、当然の事理を注意的に定めたものに過ぎない。何故なら、およそ死亡した者は、会員資格を維持する必要がないのはもちろん、権利義務の主体となりえないからである。

(2) 「死亡」を週間会員たる地位の相続性を否定する趣旨と解することは、正会員たる地位との比較からみても正当でない。

被告の正会員たる地位は、被告の定款上、訴外会社の株式を保有することにより、これを取得することができる。したがって、正会員たる地位は、訴外会社の株式の譲渡、相続に伴い、譲渡、相続が認められている。

しかし、週間会員の募集金額は、昭和一六年以降三〇〇円であり、正会員の訴外会社の株式取得額五〇〇円(一株の株式の額面)と大差なく、週間会員のゴルフ場の利用権が正会員に比して制限されていることを考慮すれば、被告に対する実質的な出捐は、週間会員も正会員と遜色はない。しかるに、正会員には、その地位の譲渡、相続を認めておきながら、週間会員にはこれを認めないのは、週間会員の合理的意思に反するのみならず、条理にも反する。

(3) 仮に、「死亡」を週間会員たる地位の相続性を否定する趣旨と解し、これを週間会員に適用するには、被告と週間会員との入会契約上の特約もしくは週間会員との個別的合意が必要である。

週間会員は、被告の定款上、議決権がなく、定款の作成、変更手続に関与できず、いわゆる適正手続が保証されていない。したがって、正会員と比較して週間会員の地位について不合理、不利益を招く被告の定款細則上の条項を週間会員に適用するには、入会契約上の特約もしくは週間会員との個別的合意が必要である。

(四) 仮に、被告の週間会員たる地位がいわゆる預託金型でないとしても、株式会社型と考えるべきである。したがって、その地位が譲渡、相続の対象となることは多言を要しない。

被告の実態は、訴外会社と経営陣及び経済的利益を同一にし、節税対策上、訴外会社の収益事業部門を被告が担当している外観をつくり出しているに過ぎず、訴外会社そのものと言っても過言ではない。すなわち、訴外会社は、株式会社形態をとっているが、実際は創立時より営利を一切目的とせず、今日まで配当した事実はない経過から明らかなごとく、その収益事業部門を被告に担当させる形式をとり、本来訴外会社に帰属すべきゴルフ場の収益は、すべて被告に帰属させ、被告の構成員にのみこれを還元するシステムを作っている。右システム採用の結果、被告の構成員は、ゴルフ場の賃貸料相当額の年会費を支弁するだけで、ゴルフ場を利用できるのである。具体的には、グリーンフィについて、ビジターは平日一万三〇〇〇円、日曜、祭日一万五〇〇〇円必要なところ、正会員、週間会員ともに五〇〇円で足り、その差額相当の経済的利益を享受できる。このように、被告の会員の地位に財産的側面があることは周知の事実である。

以上、要するに、被告の会員たる地位は株式会社型と考えられるべきである。したがって、週間会員たる地位も相続の対象となる。

6  しかるに、被告は、原告が被告の週間会員たる地位にあることを争うので、原告は、右地位の確認を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

1  認否

(一) 請求原因1項の事実は認める。

(二) 同2項のうち、亡孝次郎が昭和一八、九年ころ被告との間に被告の週間会員としての入会契約を締結し、その際金三〇〇円を被告に納入したことは認めるが、右三〇〇円が預託金であることは否認する。右三〇〇円は入会金である。

(三) 同3項のうち、(一)の事実は否認するが、その余の事実は認める。

(四) 同4項のうち、亡孝次郎について相続が開始したことは認めるが、その余の事実は否認する。

(五) 同5項の主張は争う。

2  反論

被告の週間会員たる地位は、以下のとおり一身専属的であり、相続の対象とならない。

(一) 被告の会員たる地位は、いわゆる預託金型会員制のゴルフ会員権とも、また、株主型のそれとも異なる。

(1) いわゆる預託金型あるいは株主型の会員制といわれるゴルフ場は、例外なくその経営主体は株式会社であり、これとは別に、会員の団体であるクラブが存在するいわゆる二重構造をとっている。しかるに、被告の場合は、会員の団体であるクラブが経営主体であり、会員との契約主体そのものであって、ここに根本的な相違がある(訴外会社は、法人でない被告としては不動産の取得登記ができないために、その目的だけで設立されたものである。)。

(2) 被告は、ゴルフを通じて会員相互の親睦を図ることを目的とする非営利社団であり、その団体員(構成員)が被告の特別会員、正会員となっている。したがって、この意味で、被告は社員型(社団法人型)の会員制をとっており、右団体員(構成員)の地位が原則として一身専属であり、譲渡、相続性のないことは講学上異論がない。被告の週間会員は、社団の構成員ではないが、これに準じるものであり、その地位は、一身専属で、譲渡、相続性はないというべきである。

(3) なお、被告が会員の入会時に徴収した金員は、昭和二七年の定款、細則の改正までは、預託金ではなく、すべて入会金であった。昭和二七年の改正で定款、細則の表現が「預託金」とされたのは、もっぱら対税上の理由からであり、実質は従前と変らない扱いがなされることになっており、入会時、例外なく預託金の返還を請求しない旨の念書が差し入れられている。ことに、週間会員の場合は、戦後募集が行なわれておらず、入会時預託金を納入した週間会員はいない。

(二) 現に、被告の定款一二条は、会員たる資格(地位)の消滅事由として「死亡」を掲げている。

(1) 原告は、これを単に死者は権利義務の主体となりえない当然の事理を規定した注意的なものに過ぎないと主張する。

しかし、死亡を民法上の組合員の脱退事由とする民法六七九条や合名会社社員の退社事由とする商法八五条は、その地位の一身専属性を意味するものと解するのが通説、判例であり、それは、組合員や合名会社社員相互間の信頼関係が契約の基礎になっているからであるといわれている。ゴルフクラブについても、まったく同じ趣旨から、「死亡」を会員の資格消滅事由とする規定は、会員の地位の一身専属性を意味するものと解すべきである。

(2) 原告は、被告の正会員たる地位は相続の対象となるとの前提で右解釈を論難している。

しかし、被告の正会員といえども、その地位は一身専属である。ただ、その地位取得のための資格要件とされている訴外会社の株主たる地位(株式)が相続の対象となり、その場合の相続人の入会について特別に扱う内規があるため、一見地位の相続を認めているかのごとき外観を呈しているに過ぎない。

(3) 原告は、さらに、正会員と週間会員との処遇に著しい差異が生じるとして、右解釈を論難している。

しかし、右処遇の差異は、立法論としては考慮の余地があるとしても、解釈論として裁判所が判定すべき問題ではない。

被告の場合のように経営主体の構成員である正会員は、本来経営上の責任を負う者であり、被告が万一赤字になれば、無限責任社員として、正会員が平等してこれを負担しなければならない立場にある。それ故にまた、正会員はクラブの経営に関与する権利と義務が認められているのである。他方、週間会員は、被告の構成員ではなく、経営に関与する権限はないが、そのかわり経営についての責任も負わないという立場であり、もっぱら被告理事会の定める方法でブレーをし、クラブライフが楽しめるという地位なのである。右の立場の相違が自ら定款、細則上の処遇の差異になったのであり、それはこれまで当然とされて来た。加えて、被告の正会員たる地位には訴外会社の株主という地位が不可欠に結びつけられており、土地の高騰が訴外会社の株式の高騰に結びついて、経済的に正会員と週間会員の地位に大きな差異を生ぜしめているに過ぎない。

(三) なお、原告は、預託金型会員制のゴルフ会員権には、当然譲渡、相続性があるものとして論を進めているが、預託金型なら譲渡、相続性があるとの理論的根拠はまったくない。むしろ、歴史的、沿革的に見るならば、原則的にはメンバーシップゴルフ場の会員たる地位に右の性質はないとの前提に立って、特約によってこれを認めているに過ぎない。特約によって認められるものである以上、その事例がいくら多くとも、それが事実たる慣習になることはありえない。現に、預託金型ゴルフ会員権で譲渡性を否定しているクラブは少くない。しかも、定款、細則上、譲渡禁止の規定を置かずに当然のこととして禁止しているところさえある。

三  抗弁

亡孝次郎は、昭和三三年、被告に対し脱退の申出をし、週間会員の地位を喪失した。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実は否認する。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1項の事実、同2項のうち、原告の実父亡孝次郎が昭和一八、九年ころ、被告との間に週間会員の入会契約を締結し、金三〇〇円を被告に納入して被告の週間会員たる地位を取得したこと、同3項のうち、(一)を除くその余の事実、以上の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二  亡孝次郎が昭和三五年九月一九日死亡して相続が開始したことは当事者間に争いがないところ、《証拠省略》によれば、亡孝次郎の相続人間において、相続人たる原告が亡孝次郎の有していた被告の週間会員たる地位を承継する旨の遺産分割協議が成立していることが認められる。

三  そこで、被告の週間会員たる地位の相続性の有無について判断する。

1  《証拠省略》によれば、次の各事実が認められる。

(一)  被告は、ゴルフその他戸外運動を通じて会員の体位の向上及び道義の涵養に務め、もって会員相互の親睦を図ることを目的として(定款一条)、昭和一二年に設立されたゴルフクラブであり、訴外会社よりその所有のゴルフ場、建物、付随諸施設を賃借してゴルフ場の経営を行ない、その収入はすべて被告に帰属している。訴外会社は、もともと法人格のない被告にかわって右ゴルフ場の用地、建物等の不動産の所有名義人となるために設立されたもので、被告の理事長と理事がそれぞれ訴外会社の代表取締役と取締役に就任している。

(二)  被告の会員には名誉会員、特別会員、正会員、週間会員の四種類があり(定款五条)、名誉会員は知名の士等にして被告理事会で推せんした者に限られ、会員総会における議決権を有せず(同六条)、特別会員は被告又は訴外会社に特別の功労があった者のうちから被告理事会で推せんされ、正会員と同一の資格を有し(同七条)、正会員は、訴外会社の株主にして被告理事会で入会を承認された者であり(同八条)、週間会員は特別会員又は正会員以外の者で被告理事会で入会を承認された者であり、会員総会における議決権を有しない(同九条)。

正会員と週間会員の入会手続は、所定の申込書により、特別会員又は正会員たる紹介者二名の連署をもって申込をするのみで、それ以外に入会契約書等は作成されず、会員証も発行されていない。

(三)  被告には、役員として、会員総会において特別会員又は正会員の中から選任された理事と監事(各複数)が置かれ、理事会が被告の運営、管理に関する重要事項を審議決定し、理事会において互選された理事長が被告を代表し、かつ、これを統率する(定款一四、一五条、一七、一八条)。そして、会員総会は、特別会員及び正会員をもって組織され、出席会員の過半数をもって議事を決し、被告の予算並びに事業成績及び収支決算については会員総会の承認が必要とされている(同二六、二七条)。

(四)  被告の入会条件は、正会員については、設立当初は訴外会社の株式一株(額面五〇〇円)を保有していれば足りたが、その後間もなく、右株式保有のほかに入会金二〇〇円が必要とされ、昭和一三年にはそれがさらに五〇〇円に増額された(右株式の譲受人が会員の相続人の場合は、入会金は一〇〇円)。他方、週間会員については、設立後間もない募集のときは一〇〇円の入会金を必要としたが、昭和一三年にこれが二〇〇円に増額され、さらに、昭和一六年に三〇〇円に増額された。亡孝次郎が昭和一八、九年ころ被告に入会した際に納入した三〇〇円は、右の入会金である(亡孝次郎が被告に預託金を納入したことを認めるに足りる証拠はない。)。その後昭和二七年、被告の定款の改正により、会員が入会時に被告に納入する金員は、対税上入会金から預託金に改められたが、被告においては、入会時会員からもれなく預託金返還請求権を放棄する旨の念書をとっている。なお、週間会員の募集は戦後は行なわれず、一、二名の例外を除き、戦後は週間会員は入会しておらず、預託金を納入して入会した週間会員はいない。

(五)  被告の定款一二条によれば、会員たる資格の消滅事由として、「正会員にして会社(訴外会社のこと)の株主たる資格を喪失したとき」、「脱退」、「除名」と並んで「死亡」が掲げられており(右規定は、被告の設立時より定款に設けられている。)、被告は、右規定の実際の運用として、設立時よりこれまで正会員、週間会員を問わず、会員たる地位の相続による承継を認めておらず、これが認められた事例はない。もっとも、正会員については、訴外会社の株式が相続の対象となるため、相続により右株式を承継取得した者が新たに入会申込をし、正会員として入会を認められた事例は多いが、右株式の相続による承継取得者にして、入会申込に対する理事会の承認が得られず、正会員になれなかった者も少くはない。

以上の各事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右認定事実に基づき被告の週間会員たる地位の相続性について検討するに、亡孝次郎は預託金ではなく、入会金を納入して被告に入会しており、そのうえ、これまで被告に預託金を納入して入会した週間会員もいないから、被告の週間会員たる地位が原告主張のごときいわゆる預託金型会員制のゴルフ会員権と異なることは明らかであり、また、正会員の場合のように訴外会社の株式保有が地位取得の要件となっていないから、原告主張のごときいわゆる株主型(株式会社型)会員制のゴルフ会員権と異なることも明らかである。そして、週間会員は、特別会員や正会員のように社団たる被告の構成員(団体員)でもないから、その地位がいわゆる社員型(社団型)会員制のゴルフ会員権と異なることも多言を要しない。

結局、被告の週間会員たる地位は、被告の定款、細則等の定めるところによる被告のゴルフ場施設の優先的利用権と年会費その他の負担金の納入義務を包括する権利義務関係に尽きると解されるところ、被告がゴルフを通じて会員相互の親睦を図ることを目的とするゴルフクラブであることよりすれば、右のような週間会員の地位の相続性の有無は、被告の自主的内部規範たる定款に特別の定めのあるときは、それによるべきはもとより当然である。

しかるところ、被告の定款には、設立当初よりその一二条において、会員たる資格の消滅事由として、会員の「死亡」が掲げられており、右規定は、会員相互の信頼関係を基本とする親睦団体たる被告の性質に鑑みて、被告の会員たる地位の一身専属性(民法八九六条但書)を定めたものと解するのが相当であり(最高裁昭和五三年六月一六日第二小法廷判決、判例時報八九七号六二頁参照)、現に、被告は、右規定の実際の運用としても、設立当初よりこれまで会員たる地位の相続性を認めていない(正会員については、訴外会社の株式が相続の対象となるため、その相続人が新たに正会員として入会を承認された事例は多いが、それが正会員たる地位の相続による承継と異なることは、前認定の事実関係より明らかである。)。

原告は、定款一二条所定の「死亡」を週間会員たる地位の相続性を否定する趣旨と解することは、週間会員について、処遇上正会員と著しい差異が生じるとして、正当でないと主張するが、正会員たる地位といえども、右定款の規定により相続性が否定されることは前判示のとおりであり、ただ、正会員については、その保有する訴外会社の株式が相続の対象となるため、その相続人が新たに入会を承認される事例が多いというに過ぎず、右のごとき処遇上の差異は、もともと訴外会社の株式の保有を地位取得の要件とする正会員と右株式保有を必要としない週間会員の地位取得上の要件の相違から生じるものであって、このような地位取得上の要件は本来被告の内部自治に委ねられるべき事柄であるから、これを目して違法、不当ということはできない。

原告はまた、被告の定款一二条所定の「死亡」を週間会員たる地位の相続性を否定する趣旨と解し、これを週間会員に適用するには、被告と週間会員との入会契約上の特約もしくは週間会員との個別的合意が必要であると主張するが、週間会員が被告と入会契約を締結するに際しては、当然に被告の組織、会員の地位(権利義務)等被告の存立の基礎を定めた自主的内部規範たる定款を包括的に承認し、これを遵守することを約しているものと解すべきことは多言を要しないところである。

以上の次第で、被告の週間会員たる地位は一身専属的なもので、相続の対象にはならないと解するのが相当である。これと異なる原告の主張は、いずれも独自の見解であって、採用できない。

四  してみれば、被告の週間会員たる地位が相続の対象となることを前提とする原告の本訴請求は、その余の争点について判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 横山匡輝)

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